植物タンニン鞣し革が経年変化する理由
使い込むほど色が深まる、その仕組みを工房の視点から解説します

革財布を買ったばかりのとき、「これが本当に飴色になるのだろうか」と半信半疑になる方は多いと思います。植物タンニン鞣しの革は、使い込むほど色が深まり、持ち主の手の脂や光に反応して独特の光沢が出てきます。その仕組みを、工房での経験をもとに書いてみます。
タンニン鞣しとクロム鞣しの違い
革の鞣し方法は大きく二つに分かれます。植物タンニン鞣しは、樹皮や木の実から抽出したタンニンを革に染み込ませる方法で、数週間から数ヶ月かかります。クロム鞣しは化学薬品を使い、数日で仕上がります。
タンニン鞣しの革が経年変化するのは、タンニンが酸化するからです。空気・光・手の脂に触れることで、タンニンの分子が少しずつ変化し、色が濃くなっていきます。クロム鞣しの革はこの反応が起きにくいため、色の変化が少ない傾向があります。
変化を促すのは「使うこと」
エイジングを早める一番の方法は、毎日使うことです。手で触れるたびに皮脂が革に移り、それが保湿と艶出しの役割を果たします。財布であれば、ポケットから出し入れするだけで十分な刺激になります。
逆に、長期間使わずに保管すると革が乾燥し、ひび割れの原因になります。数週間使わない場合は、薄くオイルを塗ってから保管するのが安全です。工房では、ミンクオイルより蜜蝋ベースのクリームを勧めています。液体オイルは革に浸透しすぎて、色が予想以上に濃くなることがあるためです。
仕上げによって変化の違いはあるか
同じ植物タンニン鞣しの革でも、仕上げによって経年変化の出方は異なります。染料で最初から色が入っている革は、変化が比較的ゆっくりです。素上げ(ナチュラル)仕上げの革は、最初は淡い色ですが、使い込むほど色の変化がはっきり出てきます。
どちらが良いかは好みの問題です。変化を楽しみたい方には素上げの革が向いていますが、変化の度合いは、使い方や保管の環境によっても変わります。
経年変化は、革と持ち主が一緒に時間を過ごした記録です。工房でサンプルを触りながら、どの革を選ぶか一緒に考えましょう。